天道虫(てんとうむし)

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「ええ。そして、二酸化炭素による消火装置の誤作動による窒息事故も何度か報道されている。今年も確か一件ありましたね。これらの情報を組み合わせて、今回の犯行が計画されました。実際の手順はこうです。まず森田と人志氏がドライアイスを寝室の前まで運ぶ。寝室を二酸化炭素でいっぱいにするには六十キロのドライアイスが必要です。体積は四十リットル、大きめの登山用リュックなら入るでしょう。それなら森田が持っていても違和感がない。それと、いま言った数値は業界団体がームページに掲載している情報から算出しています。彼らでも簡単に計算できたでしょう。  次に、火災警報器を誤作動させて、健次郎氏の寝室を訪れる。健次郎氏の注意を引きつけるのが人志氏の役割で、その隙に森田がドライアイスを運び込み、ベッドの下に置く。と同時に、発火装置を寝具に仕掛けておく。発火装置は、(おう)リンや生石灰(せいせっかい)などの自然発火性物質を使ったんでしょう。管理人の立場を利用して、掛け布団の中身を、不完全燃焼を起こしやすいものに入れ替えていたかもしれません。布団が燃えると、一酸化炭素が発生し、健次郎氏が中毒死する。そして、ベッドに火が移ると、その熱でドライアイスが溶け、火を消す。なかなか巧妙なトリックだ。テントウムシの死骸がなければ、見破るのは難しかったでしょう」
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