天道虫(てんとうむし)

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「誤作動には二つの狙いがありました。一つ目は放火と消火の仕掛けを健次郎氏の寝室内に持ち込むこと。そして二つ目の狙いは、ティアラの隠し場所を探ること。夜中にいきなり火災警報器が鳴ったら、反射的にティアラを持ち出そうとするでしょう。そこで、健次郎氏が夜食を取っているタイミングで、警報器を鳴らした」 「なるほど、スペアリブか!」と堂島が声を上げた。 「そうです。スペアリブを食べている時に警報器が鳴って、ティアラを持ち出そうとすれば、隠し場所の周囲にもスペアリブの脂がつく……。それにしても、猟犬を使うというのはなかなかのアイデアだ」  柏木はそう言いながら床に落ちていたポリ袋を拾うと、中身を確かめて堂島に手渡した。 「スペアリブの食べ残しです」 「どこまでも悪知恵のはたらく奴らだ」 「僕からお話しすることは以上です」 「有難うございます。同じようなことばかり言ってお恥ずかしいが、完璧な推理だ」  堂島はそう言って柏木を(ねぎら)うと、ゆっくりと森田に歩み寄った。 「森田幸蔵、窃盗の現行犯および藤井健次郎氏殺害の容疑で逮捕する」  堂島は森田に手錠をかけながら付け加えた。
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