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「藤原人志との共犯関係についても、洗いざらい喋ってもらうからな」
「くそ、テントウムシさえ……」
悔し気につぶやく森田に柏木が言った。
「自然というのはね、人間の思い通りには絶対にならないものなんだよ」
森田が二人の警官に連行された後、柏木はティアラが隠されていた場所を調べ、一枚の紙片を拾い上げた。
「それは?」と堂島が尋ねた。
柏木は紙片に書かれた文字にすばやく目を走らせると、藤原博子に歩み寄って紙片を手渡した。
「健次郎氏があなたに宛てたものです」
博子は部屋の隅で見守っている浦上の顔を見つめると、彼に読み聞かせるかのようにメモ書きを読み上げた。
「『博子へ。浦上と結婚するつもりなら、反対はしない。式ではこれを使うように。健次郎』
お祖父さま、ご存じだったのね、私たちのこと……。それにしても、なんてお祖父さまらしい……」
言葉につまった博子の眼から、涙が溢れ出ていた。
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