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「それなら単なる事故では? なぜ堂島さんが? しかも軽井沢なんて、管轄外のはずだ」と、柏木は怪訝そうに尋ねた。
「そこなんですよ。亡くなった老人というのが藤井健次郎、あの藤井コンツェルンの総帥です。そして、彼の死に事件性がないか徹底的に調べて欲しいと要請してきたのが、健次郎氏の孫娘で、次期総帥に就任する予定の藤井博子なんです。彼女からうちの上層部に働きかけがあって、私が駆り出されることになったというわけです」
「彼女も現場に?」
「ええ、彼女と秘書の浦上博次、健次郎氏の長男の藤井人志氏の三人が、昨晩からログハウスを訪れていました」
「長男? その人志氏が後継者じゃないんですか?」
「ええ。人志氏は健次郎氏の眼鏡に適わず、次男の洋次郎氏が後継者に指名されました。ところが、三年前に彼が急死し、当時アメリカのビジネス・スクールに留学中だった一人娘がその跡を継ぐことになったんです」
「彼女は放火ではないかと疑っているわけですね。現場をご覧になっていかがでしたか?」
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