天道虫(てんとうむし)

8/35

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「柏木さん、お久しぶりです。それにしても寒いですねえ」と、前園は身震いしながら言った。 「軟弱なやつだな。それ、防寒仕様の作業服だろう?」 「この時期にマイナス五度だなんて、誰だって震え上がりますよ。警部補がおかしいんです。空手の寒稽古の締めに、琵琶湖で泳いだとかいう話じゃないですか」 「そりゃすごいな。やっぱり、鍛え方が違う……」 「そういえば、柏木さんはこちらの出身でしたね。もしかして、この寒さも平気ですか?」と前園が言った。 「いや、東京暮らしが長いからね。それに、僕が生まれた上田は軽井沢ほど寒いわけじゃないんだ。十一月に氷点下になるなんてことはほとんどなかったな。天気予報で軽井沢の気温を聞くと、別世界のような気がしたよ」 「ま、とにかく車へ。ヒーターを利かせてありますから」  堂島はそう言って、駅の北口側で待機させている県警のパトカーへと柏木を導いた。  現場のログハウスに向かう間に、堂島は関係者のプロフィールを柏木に説明した。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加