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「柏木さん、お久しぶりです。それにしても寒いですねえ」と、前園は身震いしながら言った。
「軟弱なやつだな。それ、防寒仕様の作業服だろう?」
「この時期にマイナス五度だなんて、誰だって震え上がりますよ。警部補がおかしいんです。空手の寒稽古の締めに、琵琶湖で泳いだとかいう話じゃないですか」
「そりゃすごいな。やっぱり、鍛え方が違う……」
「そういえば、柏木さんはこちらの出身でしたね。もしかして、この寒さも平気ですか?」と前園が言った。
「いや、東京暮らしが長いからね。それに、僕が生まれた上田は軽井沢ほど寒いわけじゃないんだ。十一月に氷点下になるなんてことはほとんどなかったな。天気予報で軽井沢の気温を聞くと、別世界のような気がしたよ」
「ま、とにかく車へ。ヒーターを利かせてありますから」
堂島はそう言って、駅の北口側で待機させている県警のパトカーへと柏木を導いた。
現場のログハウスに向かう間に、堂島は関係者のプロフィールを柏木に説明した。
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