不動産王の野望

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不動産王の野望

 日本一の不動産王、R氏。  彼はある日そば屋で昼食をとっている最中、突然立ち上がって側近に命令した。 「山林、森林を買いまくれ。金に糸目はつけん。買えるだけ買い、わしの所有にするんだ。ありとあらゆる手立てを講じろ。法の網の目を行ったり来たりしてもかまわん」  その言葉どおり、部下たちは日本中の山林買収に取りかかった。  とにかく金のばらまきが凄い。金を湯水のように使う、その表現がぴったり。  ニュースは不動産業界はもちろん、政界、財界、一般社会まで広くあまねく行き渡った。 「R氏、なにをする気だろう。どんな思惑が」 「超大規模なゴルフ場経営か。世界でも有数の」 「いや、日本中に高速道路網を張り巡らせるつもりかもしれん。列島改造だ」 「とてつもない都市開発を行うつもりか。彼ならやりかねん」 「誰もが発見していない、貴重な鉱物を含んだ鉱脈があるとでも」  人々は口々にうわさする。R氏の真意は何か。日本有数の大富豪R氏の思惑は、いったいどんなものなのだろうか。  月日が経ち、可能な限りの買い占めは終わった。使った資金の額は天文学的数字となった。  馬鹿みたいな面積の山林森林が、R氏およびR氏傘下の企業のものとなった。  一流の経済誌の記者がR氏のもとを訪ねた。インタビューである。  彼は席に着くと、さっそく核心の謎を突く。 「Rさん、さきの大規模な買い占め、いったいどのような目的があるのでしょうか。どのような展望が。世間の耳目はそのことに集中しています」 「ふふふふ。知りたいかね。一連の買収の目的を」 「ええ。もちろんです。それこそ今回の記事の目玉であり、雑誌のウリですから」 「わしなあーー」  遠い目をするR氏。何かに憧れるようなうっとりとした表情。 「絶品の山菜そばが食べたくなってな」
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