《第2話》亡霊の女王

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《第2話》亡霊の女王

「結局逃げられてしまったね。」 ベルフェゴールと負傷をした魔物達は 立場が逆転し、急いでペオル山へ帰っていった。 「でもまぁあれだけの負傷。それに村の人々    も強くなったし。しばらくは現れないんじ  ゃないかな?それより見た見た〜??エノ  ク凄いでしょ〜??」 真面目なのか不真面目なのか 軽いノリのアロン。何よりエノクの事ばかり褒めるものだから、村人達も引き気味で 冷めた目で答える。 「はぁ〜〜??」 実際、目で見ていたダビデ、 技でベルフェゴールの撃退に成功をさせた エリシャ以外、全く納得できない。 現にエノクがいなければ村も襲われなければ 街が壊れる事もなかった。 それに負い目があるのか実際に 負傷者を手当して人の集まるこの村の集会所にエノクの姿はない。 「まぁそういう人だからねぇ。現に逃げ出し  て滅びた街もあるわけで。」 「ほら見ろ!やっぱり!あぶなかった!この  村も」 アロンは少し苦笑いで汗をたらしながら弁明する。 「まぁ、まぁ、でもね。  エノクが請け負った依頼での死者の数は0。  それは相手を見極めて戦いを避ける判断も  できるからで。  撃破数や成功率で競うギルドでは目立たな  いけど他に類を見ない凄い事だよ。」 その弁明に反論するようにどうしてもエノクの活躍というのに納得出来ない村人が声をあげた。 「それに戦ったのは俺達だ!奴は何もしてい  ない。」 確かに才能を見出したにしても逃げ惑っていたエノクに対し、武器を持って戦った村人は 納得は出来ないでいた。 「それは君たちが戦う事に意味があったんだ  よ。実際今回の戦いでも僕なんかが出向い  ていたらきっと相手も臨戦態勢で武器をも  って戦争になっていた。  そうなればどうしても死者などは出てしま  うだろう。  でも相手が咄嗟に追いかけなければいけな  いような事をしたから  そして、まだ舐めていた弱い村人が相手だ  ったから  武器を持たず魔物は生身でやってきた。  それも全てが未来を見通す戦略。」 なんだか都合のいいように言われている気がするが、この人のいい勇者の言うことは なんだか心に響く説得力のようなものがある。現に彼はあの勇者のギルドでナンバーワンと言うではないか。 身だしなみや立ち振る舞いからしても 勇者そのもので納得せざるを得ない。 「まぁそれは分かりましたが、何であなた程  の人が彼にそこまでこだわるんですか?  月とスッポンのように思えますが」 その問いはこの二人の勇者、 アロンとエノクの出会いにまで遡る。 「それはね、、、僕がエノクに命を救われた  から、、、」
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