《第2話》亡霊の女王

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それは十数年前。 アロンがまだ駆け出しの勇者だった頃。 ギルドに依頼が入る。 それはよくある魔物退治とかではなく 失踪事件。こういう安そうな事件は たいてい新人に押し付けられる。 まぁ確かに誘拐事件とかであれば 戦う可能性も秘めているが失踪の場合 本人を見つけてしまえばそこで終わり。 強さもいらない、新人にはうってつけの事件といえる。 さらに今回は教育係である戦士の先輩も同行してくれる。 まぁまずまず安全牌な事案であった。 その場所は依頼者がいるカバラという街の外れにあるこの森。 通称『迷いの森』。 「過去に100人。街の人や同じような調査が入  るも消えたように行方不明になるらし    い。」 「消えたようにって、、、それって魔物とか  に襲われたとか?」 「それが別に普段は果実を取ったり、街人が  普通に出入りする安全な森らしい。」 「確かに。ご丁寧に矢印まで書いてあって  道もしっかり整備されているしとても迷う  ような森ではないですね。」 街に近い生活圏の森には ←リトーシ池 ↑りんご畑 →アタレフ洞窟 と、分かりやすく道案内されている。 そのとおりに進むと 「結構まっすぐでしたね。森としても見通し  はいいですし勾配があるわけでもない。」 「そうなんだよ。このリトーシ池もただのた  め池で浅いし、アタレフ洞窟ではホワイト  アスパラガスが栽培されているし、生活感  バリバリな森なんだよ。」 森自体そこまで広くもなく 調査もすぐに終わってしまいそうだ。 「どこが迷いの森なんでしょうか?全然迷う   気がしませんが。」 そんな時、アロンが木に引っかかるようについているモノに気がつく。 「あれってなんですか?」 綿埃のようなそれは明らかに鮮やかな赤色に着色された生地のような素材だ。 「布?」 そういえば依頼主の息子さんが行方不明で 赤い模様のある衣服を着用していたらしい。 「ってかこれってさっき通った時にありまし  た?」 しかし、そこは先程も調査で何度も通った看板がある横の木だ。 「つまりは何かが近くにいると言う事か。」 それは夕刻が近づき、宵の明星が輝き出し 黄昏色に辺りが照らし出された時だった。 警戒して周りを見渡していると 森の奥からすすり泣くような鳴き声が聞こえてくる。 薄暗くなってきた森にちいさな人影。 それは小さな少年のようでアロンは 木々をかき分けながら 少年の元へかけつける。 そんなアロンとは別の所で 「ちょっとすみません。そこの紳士的な殿方  様。」 先輩へ近づく美人な女性。 やたら露出が高く、しかし売女とは違う 上品な魅力が漂う。 「道に迷ってしまって、、、どうか道案内を   お願いできないでしょうか?、、、」 「僕、、、こんなところでどうしたの?もう   すぐ夜になる。」 そう、アロンが声を掛けた少年は 赤い模様のある衣服を着用していた。
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