《第2話》亡霊の女王

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目を冷ましたアロン。 ここはどこだと記憶が曖昧で 起き上がってみると、少年が調理場でなにやらゴソゴソしているのが見える。 『そうだ!迷いの森に先輩と少年を探しに  、、、そういえば先輩は、、、?』 少年を見つけ、先輩とはぐれた事に気がついたアロン。 『そういえばパンを道標に置いてきたっ  け。』 ここからあの道はそんなに遠くないはずだ。 先輩も探しているかもしれない、 と、アロンは一度少年に 「ちょっと先輩を連れてくる。すぐ戻る  ここで待っててよ。」 と、告げ、小屋を後にした。 パンを辿りながら森を行くと ちゃんとその道にたどり着く事が出来た。 「なんだ。やっぱりちゃんと目印さえあ  れば迷う事がない森なんじゃないか。」 パンがあるのは道案内の看板がある脇の森。 この看板を目印にすれば小屋に行きつける。 よし! 少年も待っていることだし迷いの森での 迷う気持ちを払拭し 先輩と合流を目指す。 すると程なくしてゴソゴソ音を立てながら 低木の影をまさぐる音。 その低木の葉の間からは先輩の靴も見えている。 先輩は少年をまだ探している。 「先輩!少年、見つけま、、。」 そう言って木を掻き分けようとすると 枝についた何かがベッタリと手につく。 それは血痕。 「!!?」 よく見ると先輩の靴にも違和感がある。 まさぐるにはおかしい。まるで、寝転んでいるような向きなのだ。 つまりは寝た体勢の先輩に覆いかぶさるように 何か、、、いる!! アロンは後ずさり剣に力を溜めると 低木ごと、その存在へ向け技を放った。 " ロイヤルアトミックブラスト!" 光り輝く斬撃が 先輩に覆いかぶさる存在にぶつかる。 「ギィヤァァ!」 奇声をあげ、飛び逃げるのは美女の姿をした しかし、口の周りは血でまみれ、歯には人とは思えぬ牙を生やした、、、魔物。 先輩の肉はえぐられ、歯型が残る。 「食っていたのか。」 「あら、、、せっかくのいい所だったのに。  邪魔するの?」 見た目清楚で美しい美女だが禍々しい 雰囲気のオーラを醸し出す。 アロンは魔物との対峙に冷や汗をかきながら 剣を握る。 そんな緊張感がある場に声が響く。 「おい!お前!後ろだ!」 その声に驚き後ろを振り返ると そこには先程山小屋に置いてきた少年。 「置いていくなんてひどいじゃないか。」 しかし、そのどこからかの声の導きか それとも初めからか。 少年も怪しい雰囲気に包まれて見える。 そして、よく見ると、手には包丁。 「まさか、、、!?」 「そうだ。そいつもインキュバス。」 木の上から見知らぬ男性がアロンに声をかけた。そう。この男こそ、この森に迷い込んでいたエノク。 「何?エノク?裏切るの?」 そう言う女の魔物サキュバス。 迷いの森に住み続けたエノク。 迷いの森に迷い込んだ人間はサキュバス達の餌になるのだが 彼らの害にもならない、むしろ人を襲った証拠を消し去ってくれる ハイエナのような存在のエノクに 利を覚え、共生のような存在となっていた。 しかし、人が消えると噂になった森に近づく者が減り、お腹を空かせたサキュバス達は 目の前に転がる餌に飛びつくように エノクを襲った。
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