《第2話》亡霊の女王

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サキュバスが爪を伸ばしエノクを襲いかかる。 それに対して冒険者から盗んだ剣で太刀打ちするも、受け身一方だ。 「あなただけよ。私の美貌に魅了されなかっ  たのは。女性にトラウマでもあるのかし  ら?」 エノクの脳裏にエダニちゃんの姿が浮かぶ。 「顔がいい子は性格が悪いと思ってしまって  ね。」 インキュバスが少年の姿で包丁を持ち アロンに襲いかかる。 「ねぇ、少年は無事なのか、、、?」 インキュバスの攻撃を防ぎながら アロンが問いかける。 少年の服を着た魔物。でも もしかしたら、、、そんなアロンの想いを 打ち砕くようにインキュバスは微笑みながら答えた。 「もちろん、、、食っちまったよ。」 エノクがサキュバスに食われそうになった時、 いつ死んでもいいと思っていたのに いざ死を前にすると怖くなり 逃げ出した。 『しかし逃げ出して、生き延びて 夢か現実かも分からないこの世界で どうなるというのだ。』 それでも眼の前で繰り出されたアロンの技を見て、 『光の剣技、、、 もしかしたらこいつなら、、、』 光の技にこの森から抜け出す一縷の光を 見出す。 追い詰められるように エノクはアロンの横に並び立つ。 「なぁ生きるって何だ?」 「何だ!?急にそんな質問。」 インキュバスがエノクを睨みつける。 「お前ごときが!」 その見下す言葉に対して怒りをあらわにしたのはアロンだった。 「お前ごときだと!?人を評価していいのは    創造した神のみ!!対等な存在に上も下も   ない!!思い上がるな!」 エノクは数年住み続ける事で身を隠すように木々を登ったり、 住む動物たちと戦ったり、 サキュバス達と戦う人たちの動きを見て学んだり 実戦が経験となり やたらレベルだけが上がっていた。 しかし、レベルが高くても 身につけた調べる能力で森の仕組みや サキュバス達の能力がわかっても 襲われても戦う術、勝つ術がエノクには 無かった。 今まで奴らと戦ってきた者達は、首を切り、心臓を刺し、それでも、、、何をしても 倒す事が出来なかった。 それは実態のない夢の存在だから そうとさえ思えた。 しかし、エノクにはサキュバスとインキュバスの弱点がしっかり見える。 〘夢魔〙サキュバス、インキュバス レベル35  体力1280 魔力780 攻撃力260 防御力340 素早さ 420 弱点 光属性 幻術で夢の世界へと誘い、相手を誘惑して 捕食する。 2体は一対の存在。 「サキュバス、インキュバスは同一の存在。  片方倒しても  もう片方が生きている限り、  永遠に再生をし続ける。」 その言葉にアロン感じていた違和感の答えにいきつく。 『そいつもインキュバス!』 見た目や性別、少年と美女。 全く違う存在。ましてや美女はサキュバス、 少年はインキュバスと違う名の魔物に対して 『も』と使うのはおかしい。 そして、 「そういう事か!!」 先程技が直撃したはずの女性のダメージも、今、切り合っていたはずの少年の傷も ないもののように存在しない。 「つまりは同じタイミングで二体を同時に倒  す必要がある!」 「なるほど、、じゃあそっちは任せたよ!」 互いが同じ構えで剣を構える。 その剣向はサキュバス、インキュバスに 向けられる。 「そういえば言ってなかったよね。  、、、生きるって事は、、、。」 力を溜め光り輝く剣に恐れを感じ取り サキュバスとインキュバスは逃げ出そうとする。 しかし、すでに遅かった。 「他人と生を分かち合う事だ!!」 ロイヤルアトミックブラスト!! 二人から同時に繰り出された二つの技。 二人の呼吸、鼓動が一つに重なり その勝ち取った勝利の脈動は 二人が共にそこで生き残った事の証明だった。 昼間は安全な森も 夜になると暗闇を利用して活動を始める 幻術を操るサキュバス、インキュバスの棲む 迷いの森。 サキュバス、インキュバスが倒された事で 行方不明になるものもそれからは いなくなった。 「エノク、君は僕と同じ技を、、、?」 「いや、とっさだったから、  よく分からない。」 アロンの技、ロイヤルアトミックブラスト を同時に発したエノク。 同じものを感じたアロンはエノクを誘う。 「なぁ、エノク。僕と一緒にギルドに来ない   かい?」 エノク自身、凄く嬉しかった。 何より 『対等の存在に上も下もない!』 そう言ってくれた事。 今まで見下されてきたエノクにとって 初めての友と呼べる存在となった。 こうして、エノクはアロンと共に英雄のギルドで過ごす。
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