《プロローグ》御国の到来

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サワサワと木々は揺れ、 カタカタと祭りの飾りが音を立てて揺れる。 しかし、祭りの活気がそれをかき消し 外れの湖ではブクブクと沸騰するように 水が湧き上がる。 鳥は飛び立ち、リスやうさぎの小動物達も 一同に湖から離れるように逃げ出した。 少年が見つめる空には一面に鳥。 近くの屋台からはネズミが逃げ出す。 祭りの飾りも揺れ、 それでも地震とは違う様子に 動物達の行き先を少年は自然と追っていた。 誰も気付きはしなかった。 いや、それを知っていた者が居ても まさか現われるとは思いもしなかった。 それほど遠い記憶の果に消えた 一つの事実。 ぐおおぉぉぉぉ! まるで近くで鳴る花火の音のように腹に響く 遠吠えが祭りの会場を包み込む。 湖を割るように現れたその黒い生物にいち早く気付いたのは少年の母だった。 少年と同じように周りの異変に気づいた母は すぐさま湖へ向かい、 その山のような巨躯を目の当たりにする。 「まさか!!封印が解けるなんて、、、」 そうこう考えを巡らせている刹那の間に 生物が、息むように腹に力を溜めると 伸びをするかのようにただ 開放された力を一気に吐き出した。 すると一帯はクレーターが空くように 湖ごと消え去り 祭りの会場もろとも人々は消え去った。 それは魔王と呼ばれた者の力だった。 『いい?別に無理に戦う必要はないの!やば  いと思ったら逃げる!いい!逃げるの!そ   の勇気も必要よ』 少年はいじめられた過去に母に言われた言葉を思い出していた。 それで異変が起きた時、咄嗟に逃げなくてはと身体が勝手に動いたのだ。 魔王の前に一人立っている母。 「ただの女が我の魔力の前でも立っていられ   るとは。」 祭りで町民はほぼ会場に集まっていただろう。しかし町が全滅しても攻撃が直撃したボロボロの身体で取ってきた武器で魔王に立ち向かう。 「全て失って尚もお前は何の為に戦う。」 母は少年を常に気遣っていた。 だから祭りの会場から走って逃げる少年の姿をしっかりと目撃していた。 もしかしたらあの子は、、、。 『私はあの子に何をしてあげれたかな?何を  残してあげれたかな?生きてされいれば必  ず幸せは訪れるから』 そう思うと そして、母は魔王に言い放つ。 「未来の為!!!」 持った剣光り輝きその会心の一撃が 魔王の巨躯を切り裂いた。
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