《第3話》人に惑わされた堕天使

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「そんで話をしていた片割れがお前のお爺さ  んで国王なんだよな。」 調べる能力で相手を常に観察しているエノクは楽しそうに警察官の尋問かの如く アロンの情報調査をする。 アロンが考えるにあの扉の向こうは王の間。当時王だった祖父しかありえない。 「で、相手はお前の親父さんではないと。」 でもお父様は祖父が亡くなった後に即位している。きっと会話の感じからして違う。 そしておかしいのは父には兄弟はいない事。 「じゃあやっぱり親父さんなんじゃ?ってか  それよりもすんなり王族なお前な。」 「いやいや、小さい国ではあるし、何より  もう、僕には関係ないから。」 「そんな事言って!俺に合わせなくていいか  ら!ちゃんと今度案内しろよ!?」 きっと金銀財宝や美味しい料理が待っている!!ゆくゆくは行くであろうアロンの 豪邸を期待に胸を膨らませながら夢を描く。 そこへ! ギルドへ緊急信号!急な司令が舞い込む。 「報告!報告!街の入口で老人が野党に囲ま  れています。」 「ギルドのあるこの街で暴れようとは!」 「行っていっちょやっつけるか!!」 アロンとエノクは急いで現場へ向かった。 ヒューッ! 土煙と共に風が吹く。 暴れた後なのか、埃っぽく白く濁る視界の中 バサバサと被るフードをゆらす 白髪で白ひげの老人。 ハァハァハァハァ。 そこへ駆けつけた二人の前に 老人へ殴り掛かろうとしている一人の野党。 「おい!やめろ!」 アロンが止めにかかる。 しかし、すんでの所で届かず倒れ込む野党。 それはまるで蜃気楼かと見違えるような 濁る視界の中にある不可思議な光景。 「いや、待て!何なんだアイツは!?」 『調べる』能力で野党の数や能力を確認しようとしたエノクは予想外の違うものを 目の当たりにする。 それと同時に視界が開けていく。 そこには20〜30の野党が 全滅し地に伏せ、一人だけ覇王のように佇むフードを被った老人。 〘剣帝〙バフォメット レベル100  体力9280 魔力762 攻撃力6830 防御力5220 素早さ 6210 弱点 なし 〘技〙 レベルがカンストしている上に 桁違いの強さを誇る。 「お〜い!お前ら!野党はどうなっ、、、」 そう言って駆け寄るギルドの猛者 15人。 すると老人は背に背負う刀を 鞘に入れたまま構える。 エノクの能力がその技を見切る。 〘因果暗黒断罪派〙攻撃範囲 B 攻撃範囲Bとは放射状に放たれる攻撃。 真横や後方への攻撃はなく魔法程の 範囲も広くない。 「攻撃範囲はB!お前らは後方へバックステ  ップで逃げろ!!」 「え!?」 いきなりの指示に困惑するも猛者達は。 構える老人を前にして慌てて踵を返す。 範囲Bの射程外へ仲間へ指示を出し、 エノク自身は瓦礫へよじ登り、高くハイジャンプ。 アロンは、近くの建物の影に身を潜める。 「ほう。なるほどな。見破る能力を持つ者が  おるのか、、、しかし!!」    "因果暗黒断罪波" 辺りが一瞬暗く成ったのか それとも大気と剣士の剣技の明度の差がそう錯覚させるのか まるで一帯の空間すらも歪めるかのように 放たれた技の光のみがくっきりと浮かびだされ その斬撃は360度近い範囲。 地を這う波のように流れては 対象者を見つけると 纏わりつくように命中。 空を舞っていたエノクと隠れる事で斬撃の軌道が限られ、弾く事のできたアロン以外 同時に複数を直撃する。 「是も元は只の放射する斬撃。  しかし鍛錬する事により範囲も習性も変化    する!  極めるとは全てを昇華させる事だ。」 ぐわぁぁ!と、声を上げながら時間差で バタバタと倒れていく猛者たち。 「僕にも分かる。周りを取り込む程の恐ろし  く圧縮された光の斬撃。次元が違う。」 暗く見えたのは周りの光も吸収したが故。 一撃のみで誰もが見えても圧倒的な力を鼓舞して現れたこの剣士こそ。 「私はかつて平和の世にて、『武神』 『剣聖』と呼ばれていた。  しかし今は魔王軍!〘剣帝〙!」 魔王軍最強と言われる左目が眼帯の隻眼の剣士、バフォメット。 その存在の威圧感は相手を何倍にも大きく感じさせ、 対峙するだけで体力を奪われるような 冷や汗が流れ出す。 「ふん。」 しかし、バフォメットは相手を見極めると ゆったりとどっしりとした動きとは一転 まるで消えるたような速さで アロンの前に現れ、建物ごと切り捨てる。 「アロン!!」 ガラガラと音を立て建物が崩れ落ちる。 これだけの圧倒的な力の差がありながらも 一瞬のスキや慢心すらも感じさせず 冷静沈着に一人ずつ仕留めにかかるバフォメット。 「調べる能力者がいる中で手の内を晒すのも   得策ではない。」 そうして、今度はエノクの目の前に現れ 剣を振り付ける。 「ガッ!」 それをからがら見切り、腕で受け止めるエノク。 『刀は未だ鞘のまま。しかも技もない只の  剣撃でこの重さ。』 「ほう。」 耐える事がやっとのエノクに対し 受け止められた剣撃に怯みもせず すぐに切り替え蹴りでエノクの腹を蹴飛ばす。 ズザザザ! 吹き飛ばされた身体は地を擦りながら 摩擦で威力が無くなるまで飛ばされる。 『ガハッ!剣すら使わずこれか!』 エノクは腹を抑えながら横たわる。 「ほう。蹴られる瞬間バックステップして  威力を和らげたか。」 仕留めたはずのエノクに意識があることを確認するとゆっくりと近づき頭を鷲掴みにして 力任せに持ち上げる、 「これが見切る能力か。まるで未来が見えて  いるかのようだ。」 「ぐっ!」 身体がダメージで言うことが聞かず 無抵抗に吊るされ、そこに剣を構えられる。 「しかし、捉えてしまえば無意味。」 バフォメットの剣が光り輝く。 「さらばだ。未来の勇者よ。」 あの圧倒的な威力の技を至近距離で。 エノクは絶望の淵に死を覚悟した。   "ロイヤルアトミックブラスト!" そのバフォメットに向けて放たれた技を バフォメットは溜めていた剣で弾く。 「はぁはぁはぁ。」 ボロボロになりながらも瓦礫から抜け出したアロンがバフォメットを止める。 「僕の両手で放った会心の一撃を片手でいな  しますか。」 しかし、状況は変わらない。 未だエノクの頭を持ったまま。 「ほう。もう一匹生き残りがいたか。」 再びあの技の構えをする。 「多勢にはこれが手っ取り早い。」 周りを巻き込み圧縮された光が 辺りを暗くし、もう逃れる力の残されていない二人を巻き込むように放たれる。 「待て!バフォメット!!」 その刹那。大きな声が響き、攻撃は静止される。 「お前は!アマレク!!」 武器を持ち剣士と対等に話をする男。 それは社長 アマレク。 「社長!?魔王軍の剣帝とどういう関係?」 打倒魔王!を掲げているようなギルドの社長と魔王軍剣帝の関係。 「なんだ、アマレクよ!そいつらに話してお  らぬのか。そいつは元ギデオンと共に旅を  した戦士。」 「あぁそうだ。そして、魔王軍の剣帝と呼ば  れるあいつも、元勇者と共にした仲間の剣  士。」 それはかつて、伝説の勇者ギデオンと共に 魔王ベリアルを破ったパーティー。 〘バトルマスター〙戦士 アマレク。 〘剣聖〙武神  バフォメット。
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