《第1話》ペオル山の主神

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《第1話》ペオル山の主神

魔王復活から20年の時が経ち、各地で魔物達が蔓延り勢力を伸ばし かつての平和な世は見えないほど 世界は荒廃していった。 「おら!ちゃんと働け!」 連鎖の頂点には魔物が君臨し人間たちは鞭で打たれ家畜のように働かされ 自由など与えられなかった。 「さぁ出来た作物は全てペオル山の神に捧げ  ろ!」 取り上げられた作物を前にやせ細った老人が力なく手を震わせながら物欲しそうに言った。 「作物を全て取られては、私達は生きていけ   ませぬ。なんとか少しだけでも分け前  を。」 そんな老人を足蹴にして取り上げた作物を積荷に乗せる。 「全てと言ったら100%!全てだ!お前ら  と魔族は食べる物が違うのだ!お前らはそ  のへんに生えている草や蛙でも食べていれ  ばいいだろう。」 そうして送られるのはペオル山の中腹の洞窟。 そこには魔物の集落があり、魔物は 人間が作った作物で豪勢な生活を送っていた。 「ベルフェゴール様。これが今日の取れ高で  す。」 玉座のような大きな椅子に腰掛けた大柄の魔物が、その量に山の主の山の中から真っ赤に熟れた綺麗なトマトを手に取りかじりながら不満げに話す。 「うむ。しかし最近減っては来ておらぬ  か。」 「それが村で病気が流行っており、働き手が  不足しておりまして。」 手のトマトを怒りで握りつぶし立ち上がると 口のものを飛ばしながら恐ろしい剣幕で罵声を浴びせた。 「バカもん!病気ごとき働かせろ!死んで  も構わぬ。人間など掃いて捨てるほどいる  のだから。」 「はっ!!」 「おら、働け!!病人だろうと関係ない!女  子供も全てだ!!ペオル山の神はお怒り  だ!!とにかくもっと沢山の作物を!」 そんな中、こっそりと ガタイのいい青年と少女が魔物の目を盗んで 隠れながら村を逃げ出した。
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