0人が本棚に入れています
本棚に追加
大森林の冬は厳しかった。
動物たちは消え、太陽も早く沈んでしまう。
川の水は凍る日もある。
もちろん、木の実は少ない。
だが、これらがルーエヘーデンを苦しめた最大の原因ではないのである。
一番の理由は、その"寒さ"だった。
毛皮を何枚も羽織るが、肌にひりつく冷たさがどこかにある。
ブルブルと震える中、瞼が閉じそうになるが、なんとか堪えていた。
が、一人でそんなことを続けられるわけもなく。
ついには瞼は閉じてしまった。吹雪の荒れる夜だった。
ルーエヘーデンは早速、死の淵に立たされようとしていた。
「大丈夫ですか?」
ルーエヘーデンは驚いた。
昨晩は洞窟にいたのに、暖炉が灯る家の中にいるのだから。
久しぶりにベッドで寝たおかげか、疲れもなかった。
「私はルナと申します。ご機嫌が悪かったら、すぐに申しつけくださいま。」
全身が黒い彼女をルーエヘーデンは見つめた。
彼は知ってしまった。
この大森林の自然よりも美しいものがあることを。
黒の中に一際目立つ白い肌。
しなやかな動きに、豊満な体型をしている。
特にすみれ色の瞳が、胸の高鳴りを増幅させた。
最初のコメントを投稿しよう!