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そのうち、ルーエヘーデンはルナの家に住み着いた。
薪割りや水を運ぶなどの力仕事を進んでした。
ルーエヘーデンは思った。
『もっと、彼女のために何かできたら……』
だから、彼はルナに尋ねた。
困っていることはないか。
何かしたいことはないか。
と。
ルナはその度に微笑んで、お気遣いありがとうございますと答えた。
ルーエヘーデンはその度に自分の無力に苛まれた。
その時、思い出したのが、自分の剣の腕前だった。
ムラ随一で女がこぞって恋した自分の剣技。
剣舞のように舞うことはできないが、芸で満足させることはできるのではないか、と。
ふきのとうがちらほら見え始めた頃。
ルーエヘーデンはルナに自慢の剣を見せた。
獲物や外敵を仕留めるために鍛えた技。
相手のいないこの場で一人剣を振った。
「お上手ですね」
ルナは笑顔で言った。
感嘆や感動の音色はなく、ただただ単調に聞こえた。
そうか。また、自分は失敗したのかと。
ルーエヘーデンはわかってしまった。
彼はもう、どうしたら彼女を心の底から満足させる事ができるのかわからなかった。
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