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ルナは悩んでいた。
自分の魔術のことを。
勝手に出てしまう魔術のことを。
ある日のことだった。
冬になって、森を出歩くのは危険だった。
が、ルナの周りに影響を及ぼす魔術には無意味だった。
その日も、森を歩いていた。
雪は溶け、緑が芽生えていく。
その変化を見るのがルナは嫌いだった。
「だれ、か…、、たす、、け、…、、て、、、……」
小さな声だったが、ルナの耳には届いた。
ルナは走った。
この森に人が来て、さらに助けを求めるなんて今までになかった。
倒れていたのは男性だった。
腰には剣があり、毛皮を何枚も被っていた。
額に手を当てると熱かった。
ルナは即座におぶろうとしたが、徒労に終わった。
仕方なく、嫌いな魔術を使って家まで運んだ。
三日三晩看病すると、男性は目を覚ました。
その目は驚いていた。
とりあえず、ルナは自分の名前を名乗った。
それが礼儀というものだろう。
男性はずっとこちらを見つめていた。
ルナは気づかなかった。
男性の熱っぽい視線に。
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