二二〇五年、豆の刑

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 いくつもの扉を抜けた先に、その部屋はあった。打ちっぱなしのコンクリートに壁紙を貼っただけのような素っ気ない白い部屋に、巨大な椅子が置かれている。  「四〇五番、そこに座れ」  俺はのろのろとその椅子に座った。何かに似ていると思ったら歯科医院に置いてある椅子そっくりだ。落ち着かない。  数人の刑務官達が幾度か部屋を出入りして、細々とした作業を進める。仰々しいまでの丁寧さに笑みを浮かべたのもつかの間、今度は白衣を着た男性数人がやって来たのを見て俺は青ざめた。  本当にやるのか、あの刑を。  「用意を」  助手らしき男が手際よく注射器に薬剤を満たす。それを白衣の男に手渡すと、男は俺の腕に薬剤を注射した。  「十五分ほど様子観察をお願いします。変化があったら知らせてください」  「わかりました」  それだけ言って去っていく。しばらくして異常無しと認められた俺を、刑務官達が革ベルトで固定していく。椅子と一体化した俺の前で、刑務官が今から執行される刑について説明し始めた。  「それでは今から、四〇五番に恐怖刑を執行する」  淡々と告げられる注意点を聞きながら、俺の目は新たに運び込まれた台車に釘付けになった。銀色の、医療用具が置かれるような台車の上に、白い布が一枚かけてある。  説明が終わり、台車が俺の目の前に置かれた。  白い布が外される。  そこには、えんどう豆があった。  青々としたえんどう豆が二本、皿の上に置かれているだけだ。虚を衝かれ動揺するが、次の瞬間、記憶と同時に恐怖心が俺の脳を駆け巡った。  「あ、ああ、」  そうだ、これは、この豆は──。  「あっ、あああ!!ウワァーー!!アアアアーーー!!!ごめんなさい!ごめんなさい!ゴメンナサイいいいいいー!!」  絶叫する。目を逸らしたいのに逸らせない。完全にパニック状態に陥り、ごめんなさいと泣き叫び続けた俺は、いつしか気を失った。
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