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と、俺の質問に優が一瞬きょとんとした表情を浮かべる。
次いで、彼は柔らかな笑顔を見せた。
「うーん、全部?」
「理由になってねぇ。ちゃんと言え、このバカ。……お前にとって俺は、相当昔に死んだ筈の人間だろ?そんな、本の中にしか載ってなかった様な人間のどこを好きになったのか、俺はちゃんと知りたいんだよ」
すると、俺が真剣なのを理解したのか、優も居住まいを正し、視線を重ねてくる。
「わかった。……って言っても、こうして本人を目の前にして伝えるのは何とも照れくさいのだけれど。……私はね?土方さんの誇り高い生き方に惚れたんだ」
(俺の、誇り高い生き方……)
優が俺の生き方を誇り高いと言ってくれたこと――そのことに対して胸が高鳴り、歓喜の感情が全身を駆け巡る。
同時に、あの時、いっときの感情に流されて優を受け入れないで良かったという安堵感に俺はほっと息を吐いた。
そんな俺の様子を知ってか知らずか、優は話を続けてくる。
「私が学校で学んだり、調べて知ったあなたは、本当に誇り高い人だった。強くて、優しくて、誰より新撰組を大切にしていたよね。その姿が、ときには他の隊士からは恐ろしいものに見えてしまっていたのかもしれないけれど。私には、新撰組を大切にするが故……新撰組や隊士達への愛情が深く、新撰組であることに誇りを持っているが故の行動だとわかっていたよ」
微笑みながらそう告げる優の言葉の数々に、俺は何とも照れくさくなり、自分で聞いておきながら、思わずもうやめてくれと言いそうになった。
だが、どうやら俺が照れているのを優は察したらしく、あえて言葉を続けてくる。
「1人になっても尚、新撰組で在ろうとした……誇りを、忠義を貫き通した土方さんの姿は、私の目には理想の男性……理想の人間に映ったんだ。本当だよ?そうして、同時にこうも思ったんだ。それだけ誇り高く、愛情が深い人に愛されたら……どれだけ幸せなことだろう、って」
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