土方さんちの美味しいご飯

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翌日。 泣き疲れた優にしがみつかれたまま、そふぁーとやらの上で寝る羽目になってしまった俺。 大きな窓から差し込む眩しい陽の光で目覚めたが、寝起きは最悪だった。 なんせ、狭い場所で身を縮めていた上、大の男に抱き(すく)められていたのもあって体はガチガチに固まり、全身が痛いことこの上ない。 ちなみに、俺が起きた時はまだ優は俺にしがみついていた為、その無駄に長い腕を乱暴に払い除けると、俺は部屋の中の物色を開始する。 探しているのは食い物だ。 (腹が減ったな……) 思えば、昨日この部屋に来てから茶以外何も腹に入れていない。 太陽に照らされ、だいぶ明るくなった部屋の中を、俺はうろうろと歩き回る。 ――が、ない。 食い物が何も見当たらないのだ。 (コイツ、今まで霞でも食ってたのかよ) 俺が思わずそう思ってしまう程、この部屋には菓子類はおろか食い物が欠片も見当たらないのである。 「もしかして、他に食い物をしまってる場所や部屋でもあるのか……?」 腹が減りすぎて少しずつ辛くなって来た体を引きずる様にして、俺は他の部屋を調べて回る。 が、ない。 包丁やら料理に使う道具は見つかったが、幾らその周辺を探しても食い物が一切無いのだ。 俺は仕方なく優の肩に手をかけると、やや乱暴にゆさゆさと揺さぶった。 「……んん……?」 すると、優がゆっくりと目を開ける。 そうして、その瞳に俺が映り込むや――このバカは俺を再度抱き締めると、なんとそのまま二度寝を決め込もうとして来たのだ。 「土方さん、可愛い……柔らかい……」 まるで女に向ける様な睦言(むつごと)をぬかしながら、そのまま再び夢の世界へと旅立とうとしているバカ。 俺はそんなバカ――もとい優の頭を思い切り引っ叩いた。 「いった……。酷いよ、土方さん……」 頭をさすりながら、のそのそと(ようや)く上半身を起こしてくる優。 彼は座る体勢を整えつつも再度、俺にしがみついてこようとする。 俺は、そんな阿呆の顔面を思い切り手のひらで押し退けると、短く、 「飯」 とだけ告げた。
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