土方さんちの美味しいご飯

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が、宣言したは良いがこの家には食材がない。 俺は面倒くさそうな優を何とかどついて、食材を買いに行くことにした。 ちなみに、俺のこの服装ではこの時代には悪目立ちしてしまうということで、優の服を借りて着ることになった俺。 優はへらへらと笑いながら、 「土方さん、着るの手伝ってあげようか?」 などとぬかしていたが、俺は空いていた部屋の1つを勝手に借りると、そこで着替えることにした。 大きな布団の様なものが置かれた薄暗い部屋。 (ここは……アイツの寝室か?) と、着替えながら、布団の様なものの隣にある洋風の座卓――その上に、何かが置いてあることに気づく。 薄く開いたカーテンの隙間――そこから差し込む光に照らされキラリと光るそれは、銀色の小さな輪だった。 その隣には、伏せられた薄い木の板もある。 「なんだ、こりゃぁ……?」 俺は何となく胸騒ぎの様なものを感じて、その薄い木の板を起こし、手に取ってみた。 すると、そこには、1枚の写真が貼られていた。 「これは……アイツか?」 ――優と思しき男性が、今よりもっと幸せそうな笑顔で、女性と顔を寄せ合い写っている写真。 その写真に写る優の笑顔を見た瞬間、俺はほんの少しだけ胸がチクリと痛むのを感じていた。 (なんだ……。アイツ、人のことを好き好き言いやがって……。ちゃんと女がいるんじゃねぇか) ……別にアイツに何かを期待をしていた訳じゃ無い。 いや、そもそも俺には衆道の趣味はないのだが――。 なんとなく、胸の奥底で感じる痛み。 だが、俺にはその痛みの正体はわからず――いや、分かろうともせず。 再度、その板を元あった様に伏せると、手早く着替えを終え、部屋の外に出て行った。
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