土方さんちの美味しいご飯

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「待たせたな」 「ううん、よく似合ってるよ、土方さん」 そう言って笑うアイツの顔を……何となく真っ直ぐ見ることが出来なくて、俺は周囲に視線を巡らせる。 と、不意に優が俺の手に触れて来た。 「これから買い物に行くスーパーっていう場所はね、貴方の時代でいう商店みたいなもので、肉や魚、それに野菜とか……料理に必要な食材が全て揃っているんだよ」 「ほぉ……」 それは何とも面白い。 俺の時代では、魚は魚売りとそれぞれ別の店や人間が売っていたが、どうやらこの時代は違うらしい。 俺は感心しながらも、どさくさに紛れて手を繋ごうとしてくる優の手を振り払おうとした。 が、俺の手より大きなその手はあっという間に俺の手を握り……包み込んでしまう。 (お前には女がいるんだろうが……) ――何故、こうして俺にちょっかいをかけて来るんだ。 俺は、そんな気持ちで優を見上げると――ほんの少しだけ恨みがましい気持ちも込めて、奴を睨みつける。 すると、俺のそんな視線を受け――優はへらりと笑った。 「ねぇ……?信じてくれないかもしれないけれど。「今」の私が好きなのは土方さん1人だよ」 突然不意打ちの様な台詞を受け、思わず「はぁっ?!」と叫んでしまう俺。 周囲を歩いている人間達が、何があったのかとチラチラ此方側に好奇の視線を向けて来る。 だが、そんな視線などお構い無しに、優はさらりとこう言ってのけた。 「私はね、昔から貴方が好きだったのだけど……。昨日初めて逢ったあの時……貴方を見た瞬間、絵画や写真じゃない……本物の生きた貴方に一目惚れしてしまったんだよ」
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