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「取り戻すって言ったって、一体どうやって……?」
優は俺の言葉に躊躇した様子を見せる。
「確かに指輪と刀は無断で持ち出されたものし、大切な物だから取り戻したい。でも、彼らが自宅に厳重に保管していて到底奪い返せやしないんだ」
悲しげに――しかしどこか諦め切った様子でそう告げる優。
俺は優のその態度と口振りから、彼が恐らく何度も取り戻しに向かったのであろうことを推察する。
だが、その上で尚、俺は大切な人の魂とも呼べるものが良からぬ輩の手に渡ってしまっているのが堪らなく不快で悔しかった。
「相手はお前と同じ位の歳の男女二人なんだろ?最悪、ぶちのめして奪ってくりゃぁいい」
鼻息荒くそう話す俺に、優がゆっくりと首を横に振る。
「彼らだけじゃないんだよ。彼らはかなり屈強な警備員……警護の者を何人も雇っているんだ。恐らく、指輪と刀を換金するまでの保険だろう。私に奪還されない為の、ね」
(成る程。だが、まぁ定石の対応だろうな)
基本的に、悪事を働き――良からぬ方法で何かを手に入れたものは、自分もそれを奪われる恐怖に怯えながら、厳重にそれを守ろうとするものだ。
(しかし、そうするとそいつらをどうにかする必要があるな)
俺はそう考えながら優に視線を巡らせる。
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