土方さんちの美味しいご飯

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けれど、優の問題をこれ以上先延ばしにすることは出来ない。 何故なら、先延ばしにすることは優の大切な親の形見や家宝を売り飛ばされてしまうことに繋がるからだ。 そうして、それは……いくら今が居心地が良いからと言って、俺の望むところではなかった。 なので、食後にそふぁーで茶を飲みながら作戦会議をする俺達。 と、言っても作戦は至って簡単だ。 明日の深夜――即ち、寝込みに奇襲をかける、この一択である。 幸い、俺は腕に覚えがある。 命の取り合いだって何度も演じてきた。 優は用心棒とやらは複数いるだろうと言ってきたが――池田屋事件の時戦った、あの鬼気迫る様子の浪士達に比べれば恐るるに足らないだろう。 まぁ、それでも慢心はせず……俺たちの行く手を阻むつもりなら、全力で叩き潰すまでだが。 と、隣に座る優が心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。 「土方さん?本当に大丈夫かい?」 「当たり前だろう?俺を誰だと思ってやがる」 俺は自信満々にそう告げると、優に胸を張ってみせた。 が、それでも優は首をゆっくりと横に振ってくる。 「わかってる。土方さんが強いのはわかっているよ。でもね?それでも私は……あなたを喪うのが怖いんだ」 そう言いながら、優はそっと俺の両手を――包み込む様に握ってきた。 「私は、両親が事故にあった時……『永遠』なんてものはないのだと嫌というほど思い知らされた。いつも隣にある筈のものだって、突然消えてなくなることがあるのだ、と。そう、『当たり前』なんて……『絶対』なんてないんだよ」 俺にそう語りかける優の声は僅かに震えている。 そうして、優は俺の瞳を真っ直ぐに見つめると、言った。 「だからこそ。私は……貴方まで(うしな)いたくないんだ、土方さん。約束したよね?私が死にたくなくなるまで側にいてくれる、と。もし、貴方までうしなう様なことがあれば……私は間違いなく、もう生きていられないよ。きっと、呼吸の仕方すら、忘れてしまうんじゃないかな」 そう語りかける優の瞳はとても真剣で――俺は、思わず息を呑み、ただじっと彼の瞳を見つめ続けた。
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