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次の日の夜。
目立たぬ様黒装束に着替えた俺と優は、早速、優の元の彼女――由理恵とやらが暮らす建物の前に立っていた。
「ほぉ、随分良い家に住んでんじゃねぇか」
由理恵の家を見上げながら、口笛を吹きつつそう呟く俺。
我ながら、強盗の様な台詞だ。
だが、そんな台詞が自然に出て来てしまう程、その家は大きく豪華だったのである。
もしかしたら、彼女は過去にも――優にそうした様に、誰かを騙していたのかもしれない。
そうして、そんな誰かから搾り取った金で、この豪邸を建てたのだろう。
そう考えると、この豪邸自体も何だか腹立たしいものに思えて来て、俺はつま先で思い切り門を蹴り上げた。
「ちょっと、土方さん!警備システムが作動したらどうするの!」
慌てた様子で、俺を押さえてくる優。
俺は、そんな優にほんの少しだけ唇を尖らせながらこう告げた。
「警備も何も今から侵入するんだろ?いいじゃねぇか、受けて立ってやる」
「教科書で習った通りというか……想像してた通り、血気盛んだなぁ。でも、戦うことになるにしろ遅い方がいいだろう?こんなことに巻き込んでおいてなんだけど、私は土方さんに手を汚して欲しくないし、傷ついて欲しくもないんだよ」
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