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こうして、死神――こと、加藤 優から5時間かけてこの時代の説明を受けることになった俺。
最初は俺も、自分が遥か未来にいるなんて到底信じる事が出来なかった。
だが、優から俺がいた時代の画像等ありとあらゆる物を使って懇切丁寧に説明をされ、漸く信じざるを得なくなったのだ。
何より、俺が信じるきっかけになったのは……優が持っていた俺の遺髪と手紙だろう。
俺は――俺が仲間に、家族へ届けてくれる様頼んだその手紙や遺髪の劣化した状態から、否応なく自分が以前生きていた時代からは遥か先の時代にいるのだと痛い位に思い知らされたのだ。
「私は歴史的な遺物の手入れのお手伝いをしていてね。この遺髪と手紙をあなたのご子孫からお借りして、早速手入れを始めようと箱を開けた瞬間、突然あなたが現れたんだよ」
やや興奮した様な口調で、瞳を輝かせながらそう話す優。
だが、嬉しそうな彼とは反対に、俺の気持ちは激しく落ち込んでいた。
(そんな……あの時の俺は、折角死に場所を見つけたと思っていたのに……)
いや、歴史上では事実として「戦死」しているのだから、一度はちゃんと死んでいるのだろう。
ただ、それでも――。
(最高の死に場所で、自らが望んだ死に方をしたというのに、理由は知らんがむざむざ叩き起こされちまった……)
そのことに対する怒りと不満、それにやるせなさが、ひたすら俺の胸を締め付けていた。
「……俺は、あのまま死んでいたかった……起こさないで欲しかったんだよ。武士として、散ったままにして欲しかったんだ……」
誰にともなくそう呟く俺。
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