土方さんちの美味しいご飯

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――硝子の箱を調べ始めてから数分後。 俺はため息と共に写真を懐にしまう。 (此処にはあると思ったんだがな……) 激しく落胆する気持ちと共に、俺はため息を吐き出すと、優の方に視線を向けた。 そして、ゆっくりと首を振って見せる。 そんな俺の様子に、わかりやすく落ち込む優。 どうやら、彼が探している方にも形見の品やらは無かったらしい。 俺は、そんな優の肩にそっと触れると、にっと笑って見せる。 「なに、絶対大丈夫だ。この家にあるのはわかってんだろ?なら、直ぐに見つかるって!な?」 「……ああ。ありがとう、土方さん」 俺の言葉に、力なくも微笑んで見せる優。 優は「もしかしたら、由理恵達がもう指輪や刀を売ってしまったかも」ということを心配しているらしい。 だが、今日の昼間――優が念の為、あえて「形見や家宝を返して欲しい」とメールを送った際には、まだ手元にあることを示唆する様なめえるとやらがご丁寧に画像付きで届いていた。 つまり、少なくともまだ今日の昼間の段階では優の宝物は由理恵達の手元にあったのだ。 そうして、ああいう奴らの性格上、もし売ったとしたら――優を精神的に痛めつけるため、売った時の値段の画像やらを嫌がらせの様に送って来るに違いない。
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