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すると、不意に優が身を乗り出すや、そっと俺の両手を包み込む様に握り締めてきた。
「土方さん。どうか、そんなことを言わないで欲しい。私は、あなたに会えて本当に嬉しいんだよ。だから、そんな悲しいことを言わないでくれないか」
そう告げる優の瞳は、本当に今にも泣き出しそうで……。
自分より大きな男の、とても悲しげな――まるで、捨てられた大型犬の様な表情に、思わず言葉に詰まる俺。
俺に会えてこんなにも喜んでくれる……。
そんな優の気持ちは、本当に嬉しく思っている。
だが、俺にだって武士としての意地と誇りがあるのだ。
死に場所を決め、そこと定めて死んだ以上、蘇ってしまうのなんて生き恥を晒す以上の何物でもない様に思えた。
と、そんな俺の瞳を――優が不意に真っ直ぐに見つめてくる。
「……ねぇ?じゃぁ、考え方を変えてみよう。……例えば、何故土方さんは、再びこの世に呼び戻されたんだと思う?」
優の口から飛び出した思ってもみない言葉に、大きく首を傾げる俺。
(何故、俺が再びこの世に呼び戻されたか、だと……?)
そうだ……。
そう言えば、何故なのだろう。
改めて考えてみると分からないことが多過ぎる。
すると、俺の瞳を見つめたままだった優が、淡く微笑みかけてきた。
「それはね?きっと、私が望んだから……。私と逢う為に、あなたはもう一度、この世に戻って来たんだよ?」
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