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(ここで詰みなのか……)
俺は悔しさのあまり、持っていた懐中電灯を握る手に、ぎゅっと力を込める。
そうして、反対側の手で優の手に触れた。
俺が触れたことに気づき、視線を上げる優。
彼の瞳には、「悔しさ」と「無念」がとても色濃く滲んでいる。
それはそうだろう。
何より大切にしていた親の形見がやっと取り戻せるかと思ったのにーーその寸前で、それがダメになってしまったのだから。
彼の胸中を思うと、その落胆は計り知れないだろう。
俺は懐中電灯をおくと、優の手を両手で包み込む様にそっと握り締めた。
(もう、終わりなのだろうか。俺は、コイツに、これ以上何もしてやれないのか……?)
小さく震える優の手から、彼の悲哀が伝わってくる様で、俺まで心が痛くなる様な錯覚に陥りそうになる。
(どうにかしてやりたい。コイツを、助けてやりたい)
ーーそうして、全てを取り戻した後の、優の「本当の笑顔」が見たい。
優の手を握り締めたまま、そう考える俺。
俺は、必死に自分に出来ることはないかと考え続けた。
その時、ふと「ある考え」が俺の頭をよぎる。
それは――この箱を開けるための、「ある数字」に纏わる考えだった。
確証なんてない。
その数字ではないかもしれない。
でも、何もしないよりは何かした方が――そう、最後まで必死に足掻いた方が絶対にマシだ。
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