土方さんちの美味しいご飯

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(ああ……あれは、死ぬのを決めた者達の瞳に宿る火だ……) 俺はあの火を――あの瞳を、何度も見たことがある。 池田屋で、禁門の変で、五稜郭で。 自分の死に際を……自らの寿命を自らで区切り、死地に赴く者の瞳だ。 (この男が言っていることに嘘はない) きっと優は、俺と会っていなければ自らの手で死ぬつもりだったのだろう。 でも、俺と出会ってしまったことで――今、初めて優の死への決意が揺らいでいる。 俺の瞳を見つめ、再度柔らかく……淡く微笑む優。 その笑顔を見た瞬間、俺は唐突に理解してしまった。 (優が言っていた通り……きっと俺は、コイツの先祖の誰かによって、此処に蘇らされたんだ。コイツを死なせない為に) その先祖が誰なのかはまだ全く見当もつかないが。 だが、差し当たって、やらなければいけないことが1つある。 俺は、未だ俺の手を握ったままの優の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。 そうして、にっと笑って見せる。 「わかったよ、仕方ねぇ。約束しちまったのは俺だし、武士に二言はねぇからな。お前が死にたくないと思える時まで、俺が家族の代わりになってやる」 瞬間、あたたかくて大きなものに包まれる俺の体。 優に抱き締められたのだと気付いたのは、彼の嗚咽が耳元で響いた時だった。 「……馬鹿なやつだなぁ。お前が死んだってお前の家族が喜ぶ訳ねぇだろ。それに、お前の家族だってお前のことを心配こそすれ、恨んじゃいねぇだろうよ」 俺がそう告げると同時、耳元で聞こえる優の泣き声が一際大きくなる。 だが、俺はそれには一切触れず――ただそっと手を伸ばすと、彼の頭を撫で続けた。 母親が幼子を慰める様に。
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