黒いクリスマスケーキ

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     部屋を真っ暗にすると眠れない性分なので、俺は寝る時いつも、室内灯の黄色い豆球だけ()けっ放しにしている。  これを真美は嫌がっており、なるべく灯りに背を向ける姿勢で眠るようにしていた。俺を奥の壁側にして、二人で抱き合うような形で眠るのだ。  本当は、こういうのは二人で少しずつ譲り合うべきなのだろうが……。  この夜は、俺の性分がプラスに働いたといえよう。  真夜中。  悪夢を見て、目が覚めてしまった。  電柱の(かげ)から現れたストーカー女が、刃物を手にして俺を追い回すという夢だ。  夢だから理不尽な部分があるとみえて、そのストーカー女は元カノでも何でもなく、知り合いですらなかった。全く見覚えのない女性に襲われるという、狂気の内容だった。 「まあ俺は、そんなにモテる男じゃないから大丈夫……」  小さく独り言を口にしながら、パチリと目を開ける。  すると視界に入ってきたのは、長髪の見知らぬ女。  ベッドの近くに立って、包丁片手に、こちらを見下ろしていた。  全身が凍りついたかのように、俺は硬直してしまう。だが、 「なんで勝手に食べちゃうの! しかも、こんな雌豚と一緒に!」  叫びながら女が包丁を振りかざすのと同時に、かろうじて体が動き出してくれた。 「起きろ、真美!」  右手で突き飛ばすようにして真美を起こしながら、左手で侵入者の腕を押さえつける。刃物を持つ右腕の方だ。 「ちょっと何なのよ、もう……」  夜中に叩き起こされた真美は、寝ぼけ(まなこ)を擦りながら文句を言っていたが……。 「……きゃあっ! どうしたの、これ! 誰よ、いったい!」 「警察に電話! いや、俺に加勢しろ!」 「わかった! 任せて!」 「何が加勢よ! やっぱり私よりも、こんな雌豚を選ぶのね!」  真美が状況を把握してから後は、もうてんやわんやで、むしろ俺が詳しく覚えていないくらいだった。  結局。  刃物を持っているとはいえ、侵入者は女性であり、しかもかなりひ弱な女性だったらしい。俺と真美の二人で、なんとか取り押さえることが出来た。  それから、警察に通報。  やってきた警官たちから色々と聞かれて、本当に大変なクリスマスになってしまった。    
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