赤ちゃんの頭

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赤ちゃんの頭

 赤ちゃんほど、可愛い存在は無いと思います。  これは人間だけでなく、動物も同じだと思っています。  ある夏の出来事でした。  僕が電車に乗っていると、とある駅で若いママさんが入ってきました。  まだ生まれて3カ月ぐらいでしょうか?  首が座って間もない、愛らしい赤ちゃんを抱っこしていました。  性別は分かりませんが、きっと着ている服の色から、男の子でしょう。  青色でしたので……。  電車が発車してしばらくすると、強い日差しが車内に差し込んできました。    この時、僕は電車の自動ドア付近に立っていました。  ママさんは、僕の目の前に立っています。  強い日差しが、車内に差し込んできました。  ドア付近に立っていた僕は、思わず瞼を閉じてしまいました。  しばらく車内で揺られていると、目の前のママさんの話し声が聞こえてきました。 「ねぇ~ あちゅい、あちゅいねぇ~」  そう言って、抱っこしている赤ちゃんの頭を撫でていました。 (あ……これは)  余計なお世話だと思いましたが、その光景を見て僕はママさんに一言、伝えたくなりました。  しかし前科がある、僕は思い止まりました。 「う~ん、かわいい。かわいい~」  と赤ちゃんのおでこを撫でまわす、ママさん。 (仕方ないんだ。たぶん、一人目の赤ちゃんだし、気づかないんだ。なにかガーゼ的なものを持ってないのかな?)  僕も一応、子育てを二人。経験した身ですので。  日差しが強い時は、赤ちゃんは肌が弱いですし、よくガーゼなどをおでこにかけたりしました。  あとで、おでこに赤みができたりして、かわいそうだからです。 (しかし、いきなり知らないおっさんが、ママさんにしゃしゃり出るのも失礼だ) (ここは何か良い方法はないだろうか?)  この瞬間、僕は思った。  僕はジーパンのポケットに、”あれ”を入れていることを思い出しました。  ポケットからそれを手に取ると、目の前にいる赤ちゃんの頭へ、優しくかけてあげました。  我が子に、得体の知れない物体をかけられたママさんは悲鳴を上げます。 「キャー!? ちょっと、なにをしているのよ、あなた!?」 「へ?」 「これって、あなたのハンカチでしょ!?」 「そうですけど……少しでも赤ちゃんの肌に、ダメージを与えないために……」 「いらないわよ! 他人のなんて! 新型のウイルスにかかったらどうする気!?」  怒られた僕は、ハンカチを受け取り、頭を下げます。 「す、すみません……」 「大体ね! あなたのハンカチ、”ドラ●えもん”のひみつ道具、”タイムふろしき”でしょ?」 「そうです……」 「この子が一瞬で、大人になったら、どうする気よ!?」 「……」  結果、僕は通報された。
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