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私は、いつも魔術の講義や修練を行っている定番の場所へ向かっている。
その途中で立ち止まった。
「もう夏か……」
私は木々の合間から、暑苦しさを増してきた初夏の太陽を垣間見る。
魔の領域。
その森の中は、夏の風物詩たる虫の声が、うるさい位に騒ぎはじめていた。
それに今日は朝から蒸し暑い。
さすがに暑いので、いつもの真っ黒な魔術服は脱いで手に持ち、今はブラウス姿だ。
袖もまくってしまって、タイもしていない。
そろそろ日焼け止め等の準備が必要になるかもしれない。
魔の領域にきて、はや2か月半。
魔法学園の試験まで、あと半月になる。
お屋敷まで戻る時間を考えると、そろそろ帰らねばならない頃だ。
そしてお嬢様は、まだ術式を使えるところまで修練が進んでいない。
しかし、それはおまけ。ボーナスのようなものだから気にする事ではないだろう。
そんな私の手の中には、手書きの術式図が5枚ある。
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