リースリット と 魔術基礎実習

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 首都のグランタリスが見えてきたころになって。  とうとう。 「……あれ……?」    リース様は、三気合成(トリブレンド)を行えなくなった。 「あれ? ど、どどど、どうしましょう、先生……?」  馬車の中で青ざめるリース様。  大丈夫ですよ、とお嬢様を励ますメイドのアシュリー。  そして、焦燥と不安が押し寄せる私。   「……これは、まずい」    まさかここまで影響するとは。  どうした物か、と思っていると。  突然、馬車の扉が開いて。  風がビュービュー入ってくる。  誰の仕業かは言うまでも無い。  髪を風にバッサバッサにされているそこの白いヤツのせいだ。  「しめて!」 「うん」 「ぬわっ!」  扉が閉められ。  風が止み。  そうして、荷物などを含めてそれなりに満員の馬車の室内に。  真っ白なチビ娘が飛び込んできた。  ミラだ。  それはもう、体当たりかボディプレスかというほどの勢いだった。 「……御者台はどうしたんですか、もう」 「飽きた」  自由だなぁ。 「術……できないの?」 「そうなのですの」  ミラの言葉に、意気消沈気味のお嬢様は項垂れた。  そしてこれはたぶん、慣れの問題なのではないかと思う。
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