23人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
今日も中庭で、リース様は懸命に練習を重ねている。
だが、このままでは間に合わない。
試験の場所は王都のニルヴァーナ魔法学園なので、いかにクラスリーの屋敷が都の端っこの区画だとしても、同じ王都なのだから急げば数時間で着く距離だ。
だから、今日一日はまだ修練に充てることができる。
回復薬を利用すれば、かなりの時間が使えるだろう。
しかし。
焦るリース様は急くあまり、いつもよりも合成の丁寧さを欠いている。
これは悪循環だ。
そして私は、なるべく生徒には自力で魔術の感覚を掴んで欲しいと思っている。
苦労や達成感を繰り返し味わうことが、術師の自信や誇りに繋がる。
一つ一つを着実に積み重ねて、真っ直ぐ成長する方が、きっと『魔術が好き』って、言えるようになる。
その筈だと――私は思っているから。
けど。
仕方がない。
こうなれば奥の手だ。
私はリース様、というよりも侍しているメイド――アシュリーに向けて言う。
「――すこし、静かな場所でリース様と二人きりになりたいのですが」
「え?」
「は?」
お嬢様には、ポカンとされ。
メイドには威嚇されてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!