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「今日で何としても、お嬢様に勘を取り戻してもらわねばなりません。そのための秘策を使います。……余計な邪魔があると、上手くいきませんから」
失礼かもしれないが、明確に『邪魔』だと言った方が理解してもらえると踏んだ。
「――邪魔……?」
メイドは、気に食わなさそうに、僅かな怒気を表情に浮かべたが。
冷静になるためか、目を閉じて考える。
私はダメ押しとばかりに、ややおどけたように言う。
「あんな危険な場所で合宿までしたのです。そこまでしておいて、ここで手を抜くわけにはいきませんからね? リース様に入学していただくために出来る事は全力で行う……。私はそのつもりなのですが、あなたは違うのでしょうか?」
「……言ってくれますね?」
「3か月一緒に居たのに、信用してくれないからですよ、アシュリーさん?」
アシュリーは大きく溜息を吐いた。
「良いでしょう。信用します。絶対変な真似はしないように」
「しませんよ?」
よし、話はまとまりましたね。
「では、行きましょうか、リース様」
「へ? あ……はい……」
確か、敷地の隅っこに別館があった筈だ。
その近くに、バラ園がある。
そこなら、誰の邪魔も入らず、落ち着けるはずだ。
――その前に。
私は振り返る。
「ミラ……あなたも来ないでくださいよ?」
しれっとついてくる素振りに感じたミラに釘をさす。
「ケチ」
ケチとかそういう問題じゃないんです。
「絶対ついてこないでくださいね」
念を押して、お嬢様とバラ園を目指す。
そこはかとなく不機嫌なミラとアシュリーを、その場に残して。
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