リースリット と 魔術基礎実習

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「別に、痛いことをするわけではありませんよ」 「ハッ、ご、ごめんなさい!!」  慌てるリース様から手を放し、体勢を整えるのを手伝う。 「いえ」   少し離れて、私も改めてまっすぐ前に立った。 「それでは始めましょう」 「は、はい」  そうして私は、お嬢様の両の手を取る。 「あ……」 「目を閉じて」 「へっ!?」 「私の魔気(オド)を、リース様の魔気(オド)に同調させて、合成を補助します。――目を閉じて、瞑想を」 「あ……はい!」  お嬢様が両の瞳を閉じる。  私も目を閉じた。  そうして、魔気(オド)を手の中に導き出す。 「……リース様も、魔気(オド)を……」 「はい……」  しかしなかなか、お嬢様は魔気(オド)を出せないようだった。  私が握る両の掌から、少し汗ばんだ感触と、落ち着かない心の波が、間断なく伝わってくる。 「お嬢様、集中を。心を落ち着かせて」 「……」  お嬢様は、はい、とは答えなかった。  時間だけが過ぎていき。  湿潤と(さざなみ)だけが加速する。  そうして。  突然その手が、勢いよく引っ込められた。  あれ? と思い目を開けた時。   「ごめんなさい、できませんわ~~~~~~~~~~っ!」  リース様は、慌てたように、脱兎のごとく走り去ってしまった。  何故?
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