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私はミラの太ももで首をロックされたまま、うつ伏せで起き上がれずに地面でジタバタする。
「なにするんですか!?」
私は声を絞り出す。
「何もしないって言ったではないですか! 嘘つき!」
これはアシュリーの声だ。
視界がミラの太ももとフリルしかなくて何も見えないが。
見ていたのか。垣根の隙間から……?
「……契約違反」
ミラは何の話ですか。
というか今、アシュリーの言うことを聞きましたね。
裏切り者ぉ!
「とにかく放してください」
ギブです、ギブ。
そして私は解放された。
何とか立ち上がるが、あちこち痛い。
特に首。
しかし泣き言を言っている暇はない。
もう一度お嬢様と話をしなければ。
そう思っていると。
「――アダストラ様は、お嬢様をどうなさりたいのですか?」
「どう……?」
「はぁ~~~」
アシュリーに凄い溜息を吐かれた。
「仕方がありませんね――」
そう言いながら、アシュリーは城のように大きな屋敷を見上げる。
「――少しだけ、アダストラ様に、お嬢様の事をお話しておきます」
魔術の鍛錬に関わる話かどうかはさておき。
ここでこんな話をするということは、リース様の心情に関わる話なのだろう。それに私も少し気になっていた。
このお屋敷に住んでいるはずの人たちの事が――。
「――もしかしたらお気づきかもしれませんが、お嬢様のお父様とお爺様は大変お忙しい方で、今も昔も、屋敷におられる時間はほとんどありませんでした……。それは、お嬢様が幼い時からずっとだそうです」
お父様とは旦那様の事だろう。
そしてお爺様とは、大旦那様。
つまり私の雇い主、ブルックリン・マルズ・クラスリーのことに違いない。
その二人は、ここに来て一度も出会えていないままだった。
やはり忙しいのだな。
だからか……。
「ふたりがお戻りになられるのは年に1度か2度。つまりお嬢様は、何年もこの広いお屋敷でずっとお一人だったのです……。大旦那様が、お嬢様を学園に入学させようとなさるのは、お友達もできるかもしれないという、お考えも込みなのかもしれません……」
なるほど……ん?
あれ? そういえば……。
「母君は?」
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