23人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
その勢いのまま、振り回されたブラシが。
私の頭をかすめて行った。
二股の、お気に入りの魔術帽子が吹き飛ばされ、髪が振りみだされる。
私の身長が低めだったから助かったが、もう少しで頭がもげる所だったかもしれない。
あと、メイドが騎馬戦闘の訓練をしているような手練れでは無かったのも幸いだった、武器の扱いはド下手なようだ。
けれど、馬の扱いは芸術的に上手く、既にこちらに向けて方向転換が終わっている。
そしてその手に握るのはブラシのはずなのに。
槍に見えるシルエットは完全に騎士のそれであり。
すごいプレッシャーと怒りが感じ取れる。
「ぺ、ペリシーさんでしたっけ? どうしたんですか一体!?」
私の叫びを聞いて、メイドは突撃させようとしていた馬を静止させた。
「……厩にお嬢様が水を飲みに来られましたから、変だと思って事情を聞いたら、アダストラ様と特訓をなさっていたと……」
「それがなぜ……?」
怒る理由に関係しているのかわからないのですけど。
「泣いておられましたので……以上です。覚悟は宜しいですね」
はっ!?
え? 泣……?
うそ、どうして!?
再び、メイドはブラシを構えて突撃する素振りだ。
「いや、ちょ、ちょっとォ……!?」
最初のコメントを投稿しよう!