リースリット と 魔術基礎実習

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 しかしこのままでは作った魔力の行き場が無い。  開放するには量も多く、分解するのは少し勿体ない。  だから……。  もう一度、背中に回り、お嬢様の肩に振れ、魔気(オド)を同調させる。   「……リース様、詠唱を――」  それで意図を汲んでくれたお嬢様は、唱えだす。  そして、私も。  二人は、紡ぐ――!  「(みず)に芽吹き、瓊葩綉葉(けいはしゅうよう)()に燃ゆる――、走れ、凶刃成る言の葉よ――……」  『木葉短剣(リーヴスエッジ)』  その術式名を、そろって宣言した時。  カラカラと、音を叩て幾つもの短剣が出来上がる。  数にして、およそ20本ほどの木葉の短剣が、周囲の地面に無造作に落ちて散らばった。  魔力量が多かったために、1本や2本では使い切れなかったからだ。  私と一緒に、術を完成させたことで、リース様は、術式に言霊と魔力を通す追体験も出来たはずだ。  「今ので、術式に足りなかったところが解りましたか」 「はい……、わたくし一つ魔力の通しかたを間違えていましたわ」  私は、お嬢様の背中で、秘かににやりと笑う。  でしょうね? 「……これで、次からちゃんと使えますね」 「はい」  ◆ ◆ ◆ ◆   そうして――。  私の魔術の授業の最終日が終わり。  翌日、リース様は入学試験に挑んだ。  けれど、試験は魔術だけでは無かったらしい。 「そういえば、そうでしたね」  お嬢様に言われて思い出した。  私は、忘れていたのだ。   魔術以外の追加試験が無いわけじゃないことを。
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