リースリット と 魔術基礎実習

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 数日後の早朝。  私は、借りていた部屋の扉にカギをかけた。  そのカギを、すぐ傍に居るメイドに、一通の手紙と一緒に渡す。   「頼みます」 「確かに。承ります」  私には、まとめる荷物など無かったから、帰り支度はすぐに終わった。    必要な日用品は、魔法具(カバン)で持ち運びが可能だし、家具や寝具もあてがわれた部屋のモノで十分過ぎたからだ。  そして。  当主兼私の依頼人である、ブルックリン・マルズ・クラスリーに、依頼を達成したことを告げる手紙をしたためて、今しがたメイドに渡したところだ。  きっと数日後には本人に渡ることだろう。  リース様の入学が決まった事で、私の役目は終わっている。    これ以上、無用に長居する理由は無い。        ――私は、もうすぐ、この屋敷を去る。  けれどその前に、やっておかないといけないことがある。 「リース様は?」 「恐らく、バラ園に居られるかと」 「そうですか」  私が歩き出すと、その背中にメイド――アシュリーの声がかかる。 「……たどり着けそうですか?」  私は嘆息する。 「3時間ほどかかるでしょうね?」
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