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「ご案内いたします」
「頼みます」
そうして、バラ園に着くと、リース様は術式の練習をしている所だった。
近くにある休憩設備から、ミラが身を乗り出してその様子を見ている。
入学が決まってからも、リース様は魔術の練習を日課にしているようだった。
感心だ。
この調子なら、きっと将来は名のある魔術師になるかもしれない。
いや。
もうすでに、クラスリーとして名は知られているのだろうけど。
「……リース様」
背後から私が呼ぶと、お嬢様は練習の手を止めた。
けれど、振り向いてはくれなかった。
前のように小走りに寄ってきたりもしなかった。
だから私が歩み寄る。
その私の手の中には、ひとつのアクセサリーがある。
私は、俯いたままのリース様の前に立った。
「――私の、生徒であった証をお渡しいたします」
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