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そして、今後は学園で友人と呼べる者たちも出来るだろう。
けど。
「ええ。――私とミラを今日から『先生』ではなく、『友人』ということにして頂くというのは?」
友人。
従者でも、先生でもなく、だ。
リース様の立場を考えれば、きっと恐れ多い事だろう。
だってそれは、対等だという意味だからだ。
けど、きっと。
それこそが、リース様が必要としているものなのだろう。
「ゆうじん……」
お嬢様は、噛み締めるように言った。
「それは、ともだち、ということですの?」
そして確かめるように、私に向ける瞳は、不安気に揺れている。
「ダメですか?」
リース様はぶんぶんと首を横に振る。
「いいえ! いいえ!!」
力強い否定。つまり、私と友達になってくれる。
そう言うことでいいのだろうか?
「では、友達、ということで今日から、よろしくお願いします」
その瞬間。
リース様の表情が、花開いたかのように、華やかに咲いた。
満開――いや、満面だった。
「はい! こちらこそ、よろしくお願いしますわ、先生」
「良かった。――毎日とはいかないでしょうが、度々お嬢様の様子を見に来ます。……それと、先生はもう不要ですよ」
「つい」、とリース様はくすくすと笑った。
「セナ様、また魔術の事を教えてくださいますか?」
「ええ、勿論。今度は相談役ということで」
◆ ◆ ◆ ◆
「改めて、これを、受け取ってくれますか?」
私はお嬢様に、ペンダントを差し出す。
「はい、先生」
また先生、と呼ばれているが。
今は気にしないでおこう。
そうして、私は金具を外し、リース様の首にネックレスをつけた。
折角なのでそれっぽいことを言っておこう。
ほぼ密着状態になっていたので、距離を取って、身だしなみを整える。
そして。
「――リースリット・マルズ・クラスリー様。ここに、魔術教師セナ・アダストラの魔術教練の終了の証を贈呈致します。おめでとうございます」
「ふふっ、ありがとうございます!」
私の、言葉がおかしかったのか、楽しそうに笑われてしまった。
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