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「すごいですわ! まるで本当の雷のようでしたわ」
目を丸くし、ぴょんぴょんと飛んだり跳ねたりで歓喜するリースリット嬢と。
「……」
粉砕され燃え上がる一本の木を見つめ、唖然とするメイドの姿。
「・・・・・・術式までとはいかなくとも、この合成の過程は、リースリット嬢に習得してもらわねばなりません」
わたくしに出来るでしょうか。
そう自信なさげにつぶやく、少女の傍で。
メイドは震えていた。
いや。
違う――。
「なんてことするんですか! あの木は、庭師が丹精込めて育てている、モモの木でしたのに! 高貴な伯爵からの贈呈品でしたのに!」
「え?」
怒り爆発のメイド嬢の言葉に。
冷や汗を垂らしながら。
私が、炎が収まりかけ、くすぶっている木に目を向けると。
確かに、私が雷を落としたのは、モモの木のようだった。
「旦那様に言いつけておきますからね!」
「あ……!」
ご、ごめんなさい……!
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