リースリット と 魔術基礎実習

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「うぐー、うぬー、うみー!」 「お嬢様、もう少し声をお淑やかに。あと顔も不格好になっておいでですよ」  メイドの物言いに、リースリット嬢はぜぇはぁ、息を荒げながら。  「そんなことをいわれましてもぉ! どうしたらいいんですのよー!?」  全くできる気配が無い様子に。  少しばかりの苛立ちを乗せた反論。  一週間の間、その様子を私は見ていた。  そして、その全ては――。  あらゆる魔術師が、魔法を学ぼうとした時に経験する苦悩でもある。    一週間経っても出来ない、何一つ進展が無い、というのは。  普通の事なのだ。    私の見立てでは。  このまま、3か月経過することは間違いない。  むしろ、それも普通の事だ。  だが、それではいけない。  だから私は一つ提案を持ち掛けた。 「リースリット嬢」 「はい……?」   「明日から、少し出かけましょうか」 「はい!?」  リースリット嬢とメイドが同時に驚きの声を上げ。 「おでかけ? お屋敷の外にですの!?」  嬉々とするお嬢様と。  眉を吊り上げるお付きのメイド。 「どういうおつもりですか、アダストラ様! いけません。お嬢様の外出には、旦那様か大旦那様のお許しが無くては……!」  そこで、私は思い出した。  この屋敷の人間の、魔法学に対する認識を。  
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