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「あるじ……?」
仕度室の前の廊下で。
隣に立つミラに話しかけられる。
「なに?」
「……なぜこんなこと始めたの?」
こんなこと?
ミラは言葉がいろいろ足りないから。
予想しないといけないことが多い。
何を指してこんなことと言っているのか。
少し考える。
ああ。
なぜ教師になったのかという意味かな? と思い当たり。
「暇だから。世界が平和になってしまって、私のような者は、この世界にはもう不要になってきたからね。やることもないし。だから、魔物を殺す仕事は辞めにして、新しい仕事を始めたくなった。――私が好きな『魔術』を、他の誰かにも好きになって欲しくなった……。そういう仕事を、見つけたんだ、それだけだよ」
「ふうん……? 見もの……」
少しバカにしたように、ミラの目は細められた。
「――嗤いましたね?」
「さぁ……?」
そんな折。
仕度室の中から。
扉越しに。
仕度に時間がかかりそうで、準備できたら向かいますから、正門の前で待っていて欲しい。
との言葉が聞こえて来て。
私とミラは、向かうのだった。
メイドの案内なしに。
この迷路のような屋敷の中を――。
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