リースリット と 魔術基礎実習

39/137

23人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
 矢が飛来する。  (くさむら)から放たれた。  幾つもの矢が。  けれど。  馬車から一定距離に入った矢は。  とある境界を境にして、向きを反転し。    元の数倍の速度で撃ち返される。  正確無比な精度で。  矢を放った者が居る場所に向けて。   もちろんすべての矢が。  一本のこらずだ。  そして、速度が数倍だということは。   威力も数倍だということ。  だから、街道の脇の叢のあちらこちらで、矢が身体を粉砕する生々しい音と共に。  絶命する男たちの断末魔が響き渡る。  矢を放たなかったらしき者の驚く声、心配する声も、微かながらに届く。   「いったい、どうしたんですの!?」  馬車の中から、リースリット嬢の声と。 「敵襲ですって!?」  御者と私のやり取りを聞いたアシュリーの苛立つ声が聞こえてくる。  おそらく今、その二人の傍にはミラが居る筈だが。  既に。   そのやり取りをする頃には、事はほぼ収束していた。  速度を上げた馬車が、その間に駆け抜ける。  しかし。  その馬車の両サイドから。  馬に跨った野党の生き残り、数人が。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加