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矢が飛来する。
叢から放たれた。
幾つもの矢が。
けれど。
馬車から一定距離に入った矢は。
とある境界を境にして、向きを反転し。
元の数倍の速度で撃ち返される。
正確無比な精度で。
矢を放った者が居る場所に向けて。
もちろんすべての矢が。
一本のこらずだ。
そして、速度が数倍だということは。
威力も数倍だということ。
だから、街道の脇の叢のあちらこちらで、矢が身体を粉砕する生々しい音と共に。
絶命する男たちの断末魔が響き渡る。
矢を放たなかったらしき者の驚く声、心配する声も、微かながらに届く。
「いったい、どうしたんですの!?」
馬車の中から、リースリット嬢の声と。
「敵襲ですって!?」
御者と私のやり取りを聞いたアシュリーの苛立つ声が聞こえてくる。
おそらく今、その二人の傍にはミラが居る筈だが。
既に。
そのやり取りをする頃には、事はほぼ収束していた。
速度を上げた馬車が、その間に駆け抜ける。
しかし。
その馬車の両サイドから。
馬に跨った野党の生き残り、数人が。
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