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飛び出してきて。
追いかけ、並走し。
並びかけてくる。
その手には。
大剣や槍などが握られていて。
今にも襲い掛かろうとする姿が見えて。
私は立ち上がり、御者台の上から声を張る。
「やめなさい! 何もしなければ怪我を負うことも無い。今すぐ諦めて、大人しく立ち去るのです!」
けれど言うことを素直に聞く輩だったならば、野党に等なりはしないのだ。
ズタボロの服に、安物で傷だらけの革鎧をまとった中年の戦士が。
馬に騎乗したまま。真横に並び。
手綱を放し。
器用にも、手にした大剣を振りかぶり。
御者のメイドに斬りかかった。
メイドは悲鳴を上げ。
私は、嗚呼、と。
諦めと、憐憫と、残念な気持ちを
溜息に混じらせながら。
自前の黒い魔術服のローブを、鳥の翼のように広げて。
パーティションにして、御者のメイドを、覆い隠す。
その裏で。
身体を両断された男と、馬が、崩れ落ち。
転がった肉片に躓いた後続が、ひっかかって、事故って視界から消え失せて行った。
幸い、私のローブに血飛沫はかからなかったけれど。
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