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私たちは。
途中の街で宿泊したり。
止む無く野営したり。
盗賊や、弱い魔物に襲われたりしながら。
大気を漂う魔素が、少しづつ濃度を増すのを感じながら。
ようやく魔の領域と呼ばれる一帯までやってきた。
その頃になって。
馬車の室内からアシュリーの声がして。
「お嬢様……!? 大丈夫ですか!?」
「なにごとですか? アシュリー?」
御者のメイドも心配する中。
私は、もしや、と少し期待を膨らませる。
そうして。
馬車の扉が開き。
顔を見せたミラが言う。
「あるじ……」
「……もしかして、酔ったの?」
「うん」
そうか。
いや、念のために確認しよう。
「……乗り物酔い、ではないんでしょ?」
「うん。違う」
つまり。
リースリット嬢は、この通常の数倍~十数倍の魔素に、酔ったということだ。
これは、とても良い兆しだ。
なにせ魔素を感じることすらできない者は酔うことすらない。
普段は、濃度が低いために、受ける感覚が微弱すぎて自覚が無いだけで。
リースリット嬢は、魔素を感じる力が既にあるということだ。
「……魔素も設定に入れる?」
ミラのその問いかけに。
「いえ、折角ですからそのままで」
そう答える。
しかし、このまま放置しておくことも出来ない。
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