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「御者さん、もう少ししたら右に逸れて、馬車を止めてください。以前、誰かが使っていた野営地の跡が残っているはずです」
「右!? って、あれですか? しかし道が……」
ええ、今見えているのは、細い獣道でしょうね。
数十年前なら切り開かれていたんですけど。
さすがに今は木や草が邪魔をしていて。
到底馬車は通れない。
「今から広げますので。速度を落として」
私は、減速する馬車から飛び降りつつ。
馬車の前方に向けて、魔力の波を解き放つ。
それは、術式で編まれた緻密な動作をする魔術ではなく。
収束させた魔力子を無造作にぶっぱなす、乱暴な『魔法』。
そしてここは、魔素が豊富にある魔の領域だ。
その威力は簡単に、桁違いのエネルギーに跳ね上がる。
たとえ、この一帯の動植物が、魔素に適応し、抵抗力や、魔法防御を高めていたとしても。
問答無用でそのエネルギーは突き進み。
前方の草木を軒並み消し飛ばしていった。
この先の野営地の一部も消し飛んだかもしれないけど。
まぁ大丈夫でしょう。一部程度ならば。
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