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私はさらに、『風』の概念強化術式で、俊敏性を高めつつ。
「先に行って様子を見てきます。ゆっくり来てください」
唖然としている御者と、馬車の三人にも聞こえるようにそう言って。
ミラに、護衛は任せ。
私は、整地された獣道を、風のような速さで走り、先行する。
ここは魔の領域だ。
恐らく、野営地には何かしらの魔物がいてもおかしくない。
だから、先に行って、掃除をしておかなければならない。
――獣道だった部分を駆け抜けると。
急に、場所が開け。
ボロボロの天幕や木造の建物が幾つか見えてくる。
かつて、魔の領域で大規模な戦いがあった時に本陣として使われていた場所だ。
そして案の定。
弱いアンデッドや、魔獣の類が数多く闊歩している。
別に、有象無象の類であり。
気にするほどの者たちではないけれど。
その見た目や存在は、お嬢様たちには刺激が強すぎるだろう。
「仕方ない、原形をとどめない程度に片づけておきますか」
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